2025.04.10 不妊治療コラム
凍結した胚を子宮に戻す「胚融解」とは?
こんにちは、ローズレディースクリニック培養室です。
前回のコラムでは、採卵後に発育した受精卵をどのように凍結するのかについてご紹介しました。
今回は凍結した胚を子宮に戻すための「胚融解」について詳しくご説明します。
★徹底した管理・ダブルチェック
凍結保存された胚は-196℃の液体窒素中に保存されており、胚融解前に慎重に取り出します。
凍結胚がのっているデバイスの患者様のお名前・ID・凍結日を、培養士2名によるダブルチェックで厳密に確認します。
この後の工程も、患者様の子宮に胚を移植するまでの全過程で徹底したダブルチェックを行っています。
また、一つの作業スペースで必ず一人の患者様の胚を取り扱うこととしています。
他の患者様の検体が混在することはありません。
★どうやって胚を融解しているの?
胚はそのまま凍結することはできないため、「ガラス化法」という方法で凍結しています。
胚を融解する際は、凍結時に使用した凍結保護剤を少しずつ細胞から除去し、胚を傷つけることなく凍結前の状態まで戻します。この時、大切なのが融解する培養液の温度と濃度です。
融解時の温度管理は非常に重要です。
急激な温度変化が細胞にストレスを与えるため、適切な温度で迅速に融解します。
凍結胚を温度管理された融解用の溶液に迅速に入れることで、細胞の損傷を最小限に抑えます。
凍結保存時には高濃度の凍結保護剤を使用しますが、そのままでは胚に負担がかかるため、融解後に少しずつ希釈していきます。
異なる濃度の溶液を順番に使用し、胚を浸すことで細胞内外の浸透圧を調整しながら元の状態に戻していきます。
★胚移植前の最終確認
融解後、胚移植まで数時間培養し、移植前に最終確認を行います。
非常に稀なケースですが、凍結や融解の過程で一部細胞が損傷する場合もあります。
しかし、損傷していない細胞が分裂・成長し、着床に至ることが分かっています。
移植時に胚の評価が変化することがありますが、成長する力を持っているため、安心して見守っていきましょう。
★凍結しても胚の質は変わらない?
液体窒素中の-196℃の超低温環境では、胚の代謝が完全に停止するため、凍結しても胚の質が低下することはありません。
★融解胚移植の治療成績
移植する胚は事前の診察にて医師と決定します。
当クリニックでは、融解胚移植後の妊娠成績をHPに掲載しております。
実際のデータをご覧になり、治療の参考にしていただければと思います。
培養2~3日目で凍結した胚(初期胚)と5日目以降に凍結した胚(胚盤胞)での成績をそれぞれ掲載しています。
★胚融解は、妊娠へとつながる重要なステップです!
当院では、高い技術力を持つ胚培養士が、徹底した管理のもとで凍結・融解を行っております。
安心して治療に臨んでいただければと思います。
ご不明点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。