当院における、以下それぞれの症例の治療成績を掲載しております。
2015年~2016年に当院で体外受精を行った一般不妊の方の体外受精成績をまとめました。
タイミング療法・人工授精を行うも妊娠に至らなかった(初診の方の概ね80%以上がこれらで妊娠成立します)、初回体外受精施行時41歳未満の一般不妊症例52名
すなわち当院では、難治性の不妊症とされる早発卵巣不全(POI)に対し培ってきた高い知識、技術を一般不妊の方に駆使することで、一般不妊の治療に関しても、大変高い成功率を得ていることがわかります。
2015年初診、初診時41歳未満、AMH(卵巣年齢)測定感度(0.16ng/ml)以下、治療周期あたり30%以上の卵胞発育頻度(10治療周期当たり3周期以上で卵胞発育)を示した症例48例に対する当院独自の卵巣高刺激を中心とした治療成績
PFC-FD(PRP)療法
2015年初診、初診時41歳未満の早発卵巣不全(定義:FSH 30 mIU/mL以上、3か月以上無月経、40歳未満発症)のうち、1年以上無月経期間を有する(定義上は閉経)重度POF 54例に対する当院独自の卵巣高刺激を中心とした治療成績(全症例体外受精を選択)
DOR症例・重度POF症例ともに、当院独自の治療法により、従来では考えられない卵胞発育率・胚凍結率が得られ、また、妊娠成立に至ることがわかりました。このデータより、卵子残存数は同年代の女性と比べ圧倒的に少なかったとしても、良い環境で卵胞発育さえ得られれば、卵子の質は同年代女性と同等程度に保たれていると考えられます。
重度POFのデータより、自然月経消失より概ね4~5年程度までは、卵子を取り出すことができ、胚凍結および妊娠成立に導くことが可能であることがわかりました。また月経停止からの期間が長くなればなるほど、胚凍結に至る確率、すなわち妊娠に至る確率は低下することがわりました。
DOR症例は、重度POF 症例と比べ、症例当たりの卵胞発育率・治療周期あたりの卵胞発育頻度は高いものの、その他のデータに大きな差を認めず、また一般不妊の結果に近づきませんでした。このことは、DOR群の中には、単に残存卵子数が少ないだけでなく、我々の治療法で改善し得ない別の不妊要因をもった症例が含まれていることを示唆します。すなわち、DOR症例は単なるPOFの初期として理解できない何らかの要因をもっているものと思われます。こうした見解はこれまで世界中どこの不妊治療施設でももっていませんでした。当院ではそうしたDOR症例の病因分析を急ぐとともに、ランダムスタート法(2017年日本生殖医学会にて発表)などを取り入れた新しい治療を試み、一般不妊に準じた治療成績となるよう、治療法の開発・改良を行っています。
上述してきたように、当院の様々な試みにより、これまで不可能と考えられていたPOF不妊に対する治療の道が開けつつあります。さらにその手前のいわゆるDOR症例は、単なる軽度のPOFと考えられる症例ばかりではなく、他の要因によってさらに妊娠しにくくなっている可能性があります。これはこれまで気づかれなかった新しい見解であり、当院ではこれらの要因の分析を鋭意行なっております。
いずれにせよ、AMH値が低下して、お子さんのできにくい方は、出来るだけ早期に当院を受診されることをお勧めします。