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2025.01.15 不妊治療コラム

【培養室より】施設間での凍結物の移送についてご紹介

こんにちは、ローズレディースクリニック培養室です。
今回のコラムでは、施設間の凍結物の移送について知っていただきたいと考えています。

ここでは、移送とは何か、移送で運べるもの、移送の仕方、そして考えられるリスクや注意点について簡単にご紹介します。

1,移送とは?
移送とは、ある医療機関で保管されている凍結物を、別の医療機関へ輸送することを指します。
例えば、下記のようなケースで移送が検討されます。

・お引っ越し等により、通院先を変更する必要がある
・特定の治療方針や設備を持つ医療機関で治療を受けたい

いずれの場合も、患者さまが引き続き不妊治療を受けられるようにするために、凍結物の移送が行われます。

2,移送で運べるもの
移送では、主に以下のものが対象となります。
・凍結胚(受精卵)
・凍結精子
・凍結卵子
ただし、医療機関によっては対応が異なる場合があります。

また各施設で保管している容器の種類や凍結方法によって、移送に必要な書類や手続きが変わることもあるため、事前に移送先・移送元の双方で確認が必要です。

3,移送の仕方

3-1. 移送容器と輸送手段

凍結物を移送する際は、「ドライシッパー」という液体窒素を充填した容器を使用します(写真①)。


写真①:当院で使用しているドライシッパー

ドライシッパーは、容器内をマイナス150度以下の極低温状態に保つことで、凍結物を安全に輸送することができます。
輸送手段は、専門の輸送業者を用いることが一般的で、専用の車両や航空便など、最適な方法で運搬されます。
輸送に関わるスタッフも容器の取り扱い方法や温度管理に熟知しているため、安心してお任せいただけます。

3-2. 手続きと書類
移送には、元の医療機関と移送先の医療機関、それぞれが定める書類や合意書が必要です。
主な手続きの流れは以下の通りです。

・移送先・移送元への連絡:事前に両施設に連絡し、移送可能か確認
         ↓
・書類の準備:移送依頼書や同意書など、各施設で必要となる書類を提出
         ↓
・スケジュール調整:移送日時・方法を輸送業者や両施設の都合に合わせて調整
            ↓
・胚の確認・受け渡し:移送する胚の番号・個数を医療スタッフ同士でダブルチェックし、移送容器へ移し替え

このように施設間での受け渡しが円滑に行われるよう、事前の調整がとても重要です。

4,移送のリスクと注意点

上述の通り、凍結胚の移送には専門の容器や輸送システムを用いて安全性を高めていますが、以下のようなリスク・注意点があります。

4-1. 温度変化
移送中に万が一、容器の取り扱いミスや温度管理の不備が生じた場合、内部の温度が上昇し、胚が融解・損傷する恐れがあります。

4-2. 衝撃や振動
車両輸送や空輸の際、衝撃や振動により容器内の凍結物に影響が及ぶ可能性があります。

4-3. 書類不備・コミュニケーションミス
書類に不備があった場合や、施設間で情報共有が不十分な場合、移送がスムーズに行えないだけでなく、誤って他の胚と取り違えるリスクもゼロではありません。

5,まとめ
施設間の凍結胚移送は、不妊治療の選択肢を広げ、患者さまが安心して治療を継続できるようにする大切な手段です。

専門の輸送容器・業者を利用し、適切な温度管理・衝撃対策・徹底したダブルチェックなどを行うことで、リスクを最小限に抑え、安全に胚をお届けすることが可能です。

移送を検討されている方は、まずは主治医にご相談ください。

ローズレディースクリニックでは、不妊に悩まれる方々が安心して治療に取り組めるよう、情報発信やサポートに力を入れております。
お一人お一人の状況に合わせた最善の治療をご提供し、ご夫婦で前向きに不妊治療を乗り越えられるよう、スタッフ一同全力でサポートいたします。