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2025.05.20 不妊治療コラム

胚移植に用いる高濃度ヒアルロン酸含有培養液とは?

こんにちは、ローズレディースクリニックの培養室です。
今回のコラムでは、胚移植時に使用する高濃度ヒアルロン酸含有培養液についてご紹介します。

高濃度ヒアルロン酸含有培養液とは?

高濃度ヒアルロン酸含有培養液は胚移植専用の培養液で、その名の通り従来の移植用培養液と比較してヒアルロン酸が豊富に含まれていることが特徴です。

また、この培養液は粘性が高いという特性を持っています。

ヒアルロン酸が豊富に含まれることで期待される効果

ヒアルロン酸は、ヒトの体内に広く存在する分子です。
例えば、皮膚や関節の構成成分の一つとして知られています。

また、ヒアルロン酸は女性の子宮内膜にも存在しており、受精卵の着床時期に発現量がピークに達することが分かっています。
受精卵および子宮内膜には、それぞれヒアルロン酸と結合するヒアルロン酸受容体が発現しており、この受容体を介して受精卵は子宮内膜に接着します。

そのため、高濃度ヒアルロン酸含有培養液を培養時に用いることで、受精卵の着床を助ける「糊」のような役割を果たし、子宮内からの排出を防ぐ効果が期待されます。

高濃度ヒアルロン酸含有培養液の医学的根拠

医学的根拠に基づく医療の有効性評価を行う**国際的な組織「コクラン」**の報告によると、高濃度ヒアルロン酸含有移植培養液を使用することで、出生率の向上および流産率の減少が認められたとされています(1)
具体的には、ヒアルロン酸を含まない培養液の出生率が33%であるのに対し、ヒアルロン酸を含む培養液では出生率が37~44%に向上する可能性が示されています。

当院では、不妊に悩まれる方々に対し、より良い医療を提供できるよう、培養室からの情報発信にも力を入れ、治療に役立てたいと考えています。

不妊治療をご夫婦で乗り越えていくための力になれるよう、スタッフ一同努めてまいります。


参考文献
1.Heymann D, Vidal L, Or Y, Shoham Z. Hyaluronic acid in embryo transfer media for assisted reproductive technologies. Cochrane Database of Systematic Reviews 2020, Issue 9. Art. No.: CD007421. DOI: 10.1002/14651858.CD007421.pub4