2024.12.02 不妊治療コラム
【培養室より】精子と出会った卵子は、どのように成長していくの? ~胚の発育過程と評価~
こんにちは、ローズレディースクリニックの培養部です。
前回のコラムでは、受精の方法についてご説明しました。今回は、受精の判断とその後の胚の成長についてお話しします。
☆受精が成立したかどうかはどうやってわかる?
卵子と精子が出会い、受精が成功すると、いくつかの「目印」が現れます。その主な目印が「第二極体(PB)」と「前核(PN)」です。
☆ 第二極体
精子が卵子に入ると、卵子はそれを感知して「第二極体」という小さな細胞を放出します。これは、卵子が受精によって活性化された証拠です。
卵子は成長の過程で「第一極体(成熟した卵子をつくる際に、排卵のときに放出されるもの)」をすでに放出しているため、受精が成立すると、合計で2つの極体が確認できるようになります。
☆ 前核
次に、卵子と精子それぞれから遺伝子情報を含む「前核」が現れます。
受精が正常に進んでいる場合、卵子由来と精子由来の前核、合計2つの前核が確認されます。この2つの前核が見えることで、受精が成立したと判断できます。
精子が卵子にたどり着いても、うまく入れない場合や、入っても卵子が反応しない場合があります。
このような場合には「第二極体」や「前核」が現れず「未受精」と判断します。
また、複数の精子が1つの卵子に入ったり、卵子自体に遺伝的な問題があると、前核の数が通常の2つではなく3つ以上になることがあります。
このような状態を「異常受精」と呼びます。
「精子が2つ入ると双子になるのでは?」と思う方もいらっしゃいますが、複数の精子が卵子に入ると正常な発育ができず、妊娠には至りません。
☆受精卵(胚)はどのように成長していく?
受精した卵子(胚)は、細胞分裂を繰り返しながら成長します。
受精後、胚はまず2つ、次に4つ、8つと細胞が分裂して増えていきます。この段階を「分割胚」と呼びます。十分に分割すると、細胞が互いに密着し「コンパクション」という現象が起こります。
さらに成長すると、「胚盤胞」と呼ばれる球状の構造になり、この胚盤胞の中には、赤ちゃんになる「内細胞塊(ICM)」と、胎盤になる「栄養外胚葉(TE)」があります。
胚盤胞は膨らんだり収縮したりを繰り返しながら大きくなり、最終的には細胞を覆っている透明な膜(透明帯)が破れ、胚が外へ出ていきます。これを「ハッチング」と言います。
ハッチングした胚盤胞が母体の子宮内に着床すると、妊娠が成立します。
☆胚の評価とは?
成長している胚が、どれだけ順調に発育しているかを確認することは、妊娠の成功率を高めるためにとても大切です。
当院では、受精してから2〜3日目(分割胚)と5〜6日目(胚盤胞)に胚の評価を行っています。
分割胚では、細胞の数、細胞の均等さ、フラグメントの量で評価します。
フラグメントとは、細胞分裂の際にできる小さな破片のことです。
これが多すぎると、胚の発育に悪影響を及ぼすことがあります。
胚盤胞では、全体の大きさと、内細胞塊(ICM)と栄養外胚葉(TE)の状態で評価します。
発育が順調で健康な胚は、妊娠の成功率が高くなります。
そのため、胚の評価は妊娠の可能性を高めるための大切なステップです。
私たち胚培養士は、評価基準に基づいて、慎重に胚の状態を見守りながら評価を行っています。
ローズレディースクリニックでは、不妊に悩まれる方々へより良い医療をご提供できるよう、情報発信にも力を入れ、皆様の治療にお役に立ちたいと考えています。
不妊治療をご夫婦で乗り越えていくための力になれるよう、スタッフ一同努めてまいります。