女性は更年期に様々な症状に悩まされ、それを更年期障害(更年期症候群)と呼びます。 具体的には以下の症状などがあります。
こういった症状が生じる主たる原因の一つが女性ホルモン・エストロゲンの分泌低下と考えられています。また、女性の身体は、女性ホルモンによって守られている面が強く、特に皮膚、血管、骨などの他、脳を若く保つために女性ホルモンは重要な働きをします。
ホルモン補充療法は、分泌低下した女性ホルモンを補うことで更年期障害の症状改善・予防をするとともに女性の若さ、活力を保つことを目的とした薬物療法になります。
ただし、更年期に生じる症状の全てがエストロゲンの減少によるものとは限りません。 心理的要因、社会的要因、性格的要因が複雑に関与しているともされ、ホルモン補充療法が万能な治療であるわけではありません。 3ヶ月程度のホルモン補充療法で改善されない場合は別の治療を追加することも考慮します。
ホルモン補充療法では女性ホルモンを含んだ薬剤を投与しますが女性ホルモンには2種類の成分があり、多くの方が当てはまる子宮のある方は、この両者を適切に投与することが必要です。
必ず医師の指示通りに薬剤を使用してください。面倒だからといって自己判断で1種類の薬しか使わないなど、投与方法を間違えると子宮体がんの危険性が著しく増加してしまいますので注意が必要です。
周期的投与法と持続的投与法の2つの方法があります。 一般的には、閉経前や閉経直後の方は周期的投与法、閉経から数年経過している方は持続的投与法を選択する場合が多いです。
子宮のある方では、毎月の月経があることが特徴で、比較的不正出血の頻度は少ないです。
薬の使用法がより単純です。 基本的に月経を起こさないことが特徴ですが、周期的投与法に比べると不正出血の頻度がやや多い傾向があります。
薬剤の形状として飲み薬や貼り薬(パッチ)、塗り薬(ジェル)などがあります。 近年はパッチやジェルといった皮膚から薬剤を投与する方法が肝臓への負担が軽いことや血栓症の危険性が低いことから好まれています。 一方で皮膚のかぶれなどが生じやすい方は飲み薬が使用しやすいです。
投与の方法としては、患者様の状態により異なります。
2種類の女性ホルモンを周期的に投与して月経を起こす方法(周期的投与法)と持続的に投与して月経をおこさない方法(持続的投与法)があります。
1種類のホルモンを持続的に投与する方法になります。 周期的投与法はやや薬の使用法が複雑ですが、慣れればそれほど難しいものではありません。
治療の開始時や治療中には適切な管理を受ける必要があります。
高血圧の方や肥満の方はホルモン補充療法中の血栓症の危険性が高まるため、血圧や体重の管理は大切です。
ホルモン補充療法を行ってはいけない乳癌や乳腺腫瘍の有無を確認しながら投与を行うことが重要です。1年に1回はマンモグラフィーや超音波検査による健診が必要です。また月に1回は自分で乳房に触れ変化を察知することもすすめられます。
1年に1回は内診を行い子宮頸がんと子宮体がんの検診および超音波検査で子宮や卵巣に異常がないことを確認することが必要です。
薬物による副作用を確認するため半年から1年に1回の血液検査を行う必要があります。
不正出血、乳房のはり・痛み、吐き気、頭痛などは程度の個人差がありますがよく見られる副作用です。経過とともに気にならなくなる場合もありますが、改善しない場合は投与量を減量したり、治療を中止します。
60才以上の高齢での投与、肥満、高血圧の場合に静脈血栓塞栓症、脳卒中の危険性が増加すると言われています。
ホルモン補充療法と乳がん発生の危険性との関連には諸説あり、結論が出ていません。 2種類のホルモンを投与する標準的なホルモン補充療法で乳がんが増加したという報告がある一方、ホルモン補充療法による乳がんリスクは低く、発生率の増加は1,000人に1人以下で、ライフスタイル、肥満、アルコールなどで生じる影響と同程度かそれ以下だという意見もあります。
現時点ではガイドラインではホルモン補充療法の乳がん発生リスクへの影響は小さいと考えられています。ただし、乳がんは様々な要因で、誰にでも生じうる危険性は潜んでいるため、乳がんに気づかないままホルモン補充療法を受けてしまうことがないよう、1年に1回の乳がん検診を受けることは重要です。
ホルモン補充療法が今のご自身のお身体に有益な方法であるか、、、
まずは血液検査でご自身のホルモンの量を知る事から始めてみましょう。
更年期の症状はホルモン補充が必要なほど、ホルモンの量が減っているからとは限りません。その場合には、症状によっては、漢方やサプリメント、運動や食生活の見直しで改善できることもあります。
ホルモン補充が必要な場合には、美容・骨の健康・血管の健康(心筋梗塞予防、脳梗塞予防)の観点からもホルモン補充療法は最善の方法と考えております。
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