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2024.11.12 不妊治療コラム

【培養室より】採卵日に未成熟だった卵子はどうなるの?

こんにちは、ローズレディースクリニックの培養部です。
今回は、採卵日に回収された卵子が未成熟であった場合の処置についてご紹介します。

☆卵丘細胞とは?
採卵では、卵子が「卵丘細胞」と呼ばれる小さな細胞たちに包まれた状態で回収されます。
卵丘細胞とは卵子を守り、栄養を届ける重要な役割を担っている、卵子を取り囲む「サポートチーム」のような存在です。
しかし、卵丘細胞が卵子を覆っていると、卵子がどのくらい成熟しているのかを確認することができません。

 

☆顕微授精(ICSI)と体外受精(IVF)では卵丘細胞の扱いと成熟度確認の違いはある?
受精操作においては、顕微授精(ICSI)と体外受精(IVF)で卵丘細胞の扱いが異なります。
ICSIでは、卵子が成熟しているかどうかを受精操作前に確認するために、まずは卵丘細胞を取り除く操作を行います。

一方でIVFでは、卵丘細胞がついたままの状態で精子を振りかけるため、受精前に卵子の成熟度を確認することができません。
これは、IVFでは精子が自力で卵丘細胞を通過し、卵子にたどり着く必要があるためです。
そのためIVFの場合、卵子の成熟度が確認できるのは、精子を振りかけてから数時間後となります。

☆未成熟卵子への対応方法
未成熟だった卵子への対応は、受精方法によって異なります。
IVFの場合、採卵後の確認で卵子が未成熟であることが分かった場合、その時点で追加の処置ができないため廃棄となります。

一方でICSIでは、未成熟卵子であっても追加で培養を行い、数時間後に成熟してMII期へ進んだ卵子に対して、顕微授精を試みることが可能です。

☆卵子の成熟状況と成長の可能性について
当院では、ICSIを施行するために確認した1,526個の卵子について調査しました。
その内訳は、MII期が1,221個(約80.0%)、MI期が155個(約10.2%)、GV期が150個(約9.8%)でした。
MI期の卵子では41個(約26.5%)が当日中にMII期まで成長し、ICSIを施行することができました。

一方、GV期の卵子のうち17個(約11.3%)はMI期にまで成長しましたが、MII期に成熟する卵子はありませんでした。
このデータから、ICSI前の成熟確認時に未成熟であっても、MI期の卵子であれば追加で培養することで成熟が期待できることがわかります。

☆他施設の研究データによると?
他施設からの報告(1)では、採卵当日にMI期からMII期に成熟した卵子を使用した5,976周期のICSI成績が示されています。
結果は、MI期からMII期に成熟した卵子を用いた受精率や胚発生率は通常の成熟卵と比較して低いものの、凍結融解胚盤胞移植に至った場合の臨床成績(妊娠率や出産率)には有意差がないことが示されています。
このことから、未成熟卵子であっても適切な培養により成長すれば、良好な臨床成績を得る可能性があると考えられます。

つまり、未成熟なMIの卵であっても当日中にMIIになれた卵子が胚盤胞まで育てば、もともとの採卵時にMⅡが採れて胚盤胞まで育った方と同じ成績になる、ということとなります。

☆最後に
ローズレディースクリニックでは、不妊治療に取り組む皆さまに正確で最新の情報をご提供できるよう努めております。皆さまの治療がより良い結果につながるよう、スタッフ一同支援してまいります。どうぞお気軽にご相談ください。

引用文献

  1. Katase S, Arichi A, Omura N, Muramatsu H, Komine H, Mukai N, et al. Laboratory and clinical outcomes of oocytes matured from metaphase I to metaphase II on the day of oocyte retrieval in intracytoplasmic sperm injection cycles. J Mamm Ova Res. 2019;36(2):115-119.