2024.12.26 不妊治療コラム
【培養室より】学会発表のご報告(r-ICSIについて)
こんにちは、ローズレディースクリニックの培養部です。
先日、第69回日本生殖医学会学術講演会・総会にて「Rescue-ICSI(r-ICSI)」に関する発表を行いましたので、ご報告いたします。
〜Rescue-ICSI(r-ICSI)とは?~
まず、当院で行っている治療のひとつ「Rescue-ICSI(r-ICSI)」についてご紹介します。
体外受精(IVF)では、卵子が入った培養液に精子を加えます。
精子は通常、約1~2時間で卵子に到達するとされているため、当院では精子を加えてから4時間後に受精兆候を確認します。
【受精兆候の確認】とは、精子が卵子に入る際に放出される「第二極体」を観察することです。
第一極体(*)のみが放出された卵子は「受精兆候なし」、第二極体も放出されている卵子は「受精兆候あり」と判断します。
r-ICSIでは、体外受精に加え受精兆候の確認を行い、受精兆候がない卵子に対してICSIを実施します。
*【培養室より】採卵できた全ての卵子が受精できるわけではない?~卵子の種類と卵子の成長~
~r-ICSIのメリットとデメリット~
r-ICSIの大きなメリットは、ふりかけ方法では受精できなかった卵子に対してICSIを行うことで受精の機会を提供できる点です。
一方でデメリットとして、r-ICSIを実施するタイミングが早い場合には異常受精(多前核)のリスクがあり、遅い場合には卵子の質が低下する可能性があることが挙げられます。
~発表内容~
そこで、第69回日本生殖医学会学術講演会・総会にて当院における【r-ICSI施行のタイミングの検討について】ポスター発表を行いました。
【当院における最適なr-ICSI施行時間の検討】
前述したように、r-ICSIを行うタイミングによっては、異常受精、卵質が低下してしまう可能性があります。そのため、当院では卵子の状態を慎重に観察し、r-ICSIを行う最適なタイミングを検討しました。
その結果、ふりかけ法を行った6.5時間後が最適であると判断しました。
~当院での検討結果とr-ICSIの方針~
今回の検討から、当院ではr-ICSI対象の卵に対してふりかけ法後6.5時間に受精兆候がみられない場合r-ICSIを施行することとしました。
※ただし、r-ICSIを実施しても、異常受精や卵子の質の低下を完全に防ぐことはできない点をご理解ください。
~r-ICSIに関するご相談について~
r-ICSIの治療については、対象となる条件がございます。ご興味のある患者様や詳細をご希望の患者様は、医師までお気軽にご相談ください。
ローズレディースクリニックでは、不妊に悩まれる方々が安心して治療に取り組めるよう、情報発信やサポートに力を入れております。
お一人お一人の状況に合わせた最善の治療をご提供し、ご夫婦で前向きに不妊治療を乗り越えられるよう、スタッフ一同全力でサポートいたします。